感染症予防とワクチン(定義・種類)

「ワクチン」って何でしょう?「インフルエンザワクチン」なんて言います。「インフルエンザ予防接種」なんて言葉も良く聞きます。今回はそんなワクチンについて学びます。

ワクチンとは?

定義

ワクチンの定義は「人為的に免疫反応を誘導して、病気を防ぐ」ものです。

人間の体は常にいろいろなもの(細菌・菌やウイルス、ほこりなど)に晒されています。それでも、いつも通り生きていけるのは、私たちの「免疫系」が働いているからです。

免疫系は、「経験したことのあるのある敵(細菌・菌やウイルス、ほこりなど)」には良く反応します。

例えば、インフルエンザウイルス。一度ワクチンをうって「インフルエンザウイルスってこんな奴だよ」と教えてあげれば、次、インフルエンザウイルスが来た時に、よりよく対処できるのです。

歴史

そんな素晴らしいワクチン。

始まりは1796年までさかのぼります。Edward Jennerが天然痘に対するワクチンを作りました。当時、天然痘はひどい感染症でしたが、牛を買っている人(特に乳搾りの人)はあまり天然痘になっていなかったのです。

そして、ウシにも、天然痘と同じような牛痘というものがありました。その牛痘を人に注射すると天然痘にならなくなったというのが、ワクチンの始まりです。

ワクチンの種類

そんなワクチンにもいろいろな種類があります。こんなにもたくさんの種類があるのです。

  • 不活化ワクチン
  • 弱毒生ワクチン
  • トキソイド
  • コンポーネント
  • 遺伝子組み換えワクチン

生ワクチン、なんて聞いたことあるかもしれません。それぞれについて見ていきましょう!

不活化ワクチン

不活化ワクチンは、「死滅させた」病原体を使います。つまり、病原体は死滅しているため、増殖することはありません。病原体は生体内で増殖しません。そのため、安全です。ただ、安全な分、免疫が確実に作られない時もあり、効果が薄い場合もあります。

インフルエンザの予防接種で使われるワクチンは、この不活化ワクチンです。そのため、インフルエンザワクチンからインフルエンザに感染することはありません。インフルエンザ予防接種を受けても、「予防接種が原因でインフルエンザになること」はありません。(もし、予防接種後、インフルエンザとなっても、それは予防接種が原因ではなく、他の所でウイルスをもらっただけでしょう。)

生ワクチン

生ワクチンでは、弱毒化した生きた病原体を使います。

不活化ワクチンを異なり、「生きた」病原体です。そのため、体内で増殖します。より自然に近い形で、免疫反応を誘導します。自然に近い形のワクチンなため、免疫が付きやすいこともあります。

一方で、体内で増殖して、本来の病気になってしまう可能性などもあります。

トキソイド

トキソイドとは、細菌の毒素を、ホルマリンなどで無毒化したものです。

感染症の症状は、細菌が出す毒素で引き起こされる時があります。その毒素の対策になります。

コンポーネント

コンポーネントとは、病原体の体の一部のみを取出し、ワクチンとしたものです。

先ほど、インフルエンザワクチンは不活化ワクチン(病原体の死んだもの)と書きましたが、正確には、「不活化させてから」「その一部を取り出した物」

となります。

インフルエンザワクチンは、害が少なくなるように、作られています。

今日のQuestion

生ワクチンと不活化ワクチンの違いを記せ(答えは記事中にも!ぜひ探してみてください!)

感染症の定義・影響とその対策・歴史

今回は「感染症」について学んでいきます!最近では、エボラ出血熱や、デング熱なんかが、日本でも有名になりました。インフルエンザも、実は感染症の一つです。今回はそんな感染症について学びます

感染症の特徴⇒伝染すること

感染症の特徴とは、ずばり、感染することです。もっと言えば、伝染することです。

昔は、「感染症」は「伝染病」なんても言われていたようです。人から人へ、動物から人へなど、病原体が移されてしまうものを、主に感染症と言います。

感染経路としては、分類もされていて、こんなにも種類があります。

  • 母から子供に伝わる垂直感染(HTLV1   AIDSなど)
  • 直接感染(飛沫で人から人へ)
  • 間接感染(インフルエンザの空気感染など)
  • 媒介動物感染(蚊が病気を運ぶなど、日本脳炎など)

感染症が起きる!

発症までの3ステップ!

  • 上に書いた通り、垂直感染や直接感染などで、細菌・ウイルスは伝播します。人間は、そんな病原体に、暴露されます。(病原体は体へ侵入)
  • そして、病原体は、人間の体の中で増えます。(感染
  • そして、病原体が体に悪さをして発症します。

このように、感染症が起きる(発症する)まで

  • 暴露
  • 感染
  • 発症

という3つのステップがあります。

暴露しても感染しないこと、感染しても発症しないこともあります。(ex.インフルエンザウイルスを体に持っていても、発症しないこともあります。)

感染症の影響・インフルエンザで頭が痛い!

感染症が発症すれば、いろいろな症状が出てきます。インフルエンザだと、

  • 頭が痛い
  • のどが痛い
  • 間接が痛い
  • 体温上昇

以上のようないろいろな症状が出ていきます。

ただ、驚くべきことに、「インフルエンザウイルスは、のどにしかいない」のです。頭や関節にまでインフルエンザウイルスは移動しません。(そんなことになれば一大事です。)

喉にしか、ウイルスはいません。では、なぜ、頭が痛くなったりするか?それは、体が、インフルエンザウイルスを排除しようとして、様々な体の反応を起こすためです。(サイトカインの亢進)

 

更に、他の病気を例に挙げて説明しましょう。

「急性ウイルス性肝炎」(B型肝炎C型肝炎で有名です)は肝臓の臓器障害を起こします。ただ、ウイルス単体で、この臓器障害を起こすわけではありません。(むしろ、ウイルス単体だと悪影響はありません。)

ただ、人間の体が、このウイルスを排除しようとして、臓器障害を起こしてしまうのです。(自己免疫機序)

感染症の歴史

世界的流行

古くから、「感染症」により亡くなってしまう方は多くいました。(天然痘や結核の感染は、古代エジプトにも見られたようです。)

  • 中世ヨーロッパでのペスト
  • コレラの世界的流行(1830年代)
  • 1919年頃のスペイン風邪

以上の感染症がが有名な感染症です。

1919年に流行した「スペイン風邪」は第1次世界大戦の直後ぐらいに流行しています。第一次世界大戦で亡くなった人の数より、スペイン風邪で亡くなった人の数の方が多かったとされているほどです。それほど、感染症は、人類を死に追いやってきたのです。

人類の抵抗

感染症は、このように、流行し、多くの人の命を奪いました。しかし、人間も、ただ感染症に屈していたわけでもありません。1929年、ペニシリン(人類初の抗生物質)が発見されるなど、感染症に対する薬が開発されたり、予防法を発達させたりしてきました。

最終的には1967年「感染症の時代は終わった」"to close the book on infectious disease"と言われるくらいにまで、感染症への予防、対策は進んできました。

感染症はなくなったのか?

人類は感染症対策を進めてきました。では感染症はなくなったのかと言えば、そんなことはありません。1981年に世界で初めてAIDSが確認されてから、AIDSは今なおある病気です。少し昔を振り返れば、

  • 2004年:鳥インフルエンザ
  • 2009年:新型インフルエンザ(H1N1)
  • 2014年:エボラ出血熱
  • 2016年:デング熱

など、日本でも、感染症のニュースもたくさんありました。

エボラ出血熱やSARSなどの新興感染症(新しく出てきた感染症)のみならず、結核やマラリアなど、一度は数の減った再興感染症もまた、増えてきたりもしています。

薬剤に抵抗性を示す(薬を飲んでも効かない)薬剤耐性菌なんてのも見られるようになってきました。

到底、「感染症の時代は終わった」と言える状況でもありません。これからも、人類と感染症との戦いは続いていくでしょう。

今ある対策

日本では

そんな、「感染症との闘い」。

なにも、薬の開発だけが、感染症への対策ではありません。例えば、インフルエンザ流行時の学級閉鎖なども、感染症対策の一環です。

法律では「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律」なんてのも作られたりしています。

特定の病気に罹った患者さんを診た医師は各地の保健所にその患者さんについての報告義務があったりします。感染症に対するモニタリングを続けておくことで、なるべく感染症が拡がらないようにしているのです。

海外では

ただ、同じような制度が世界中にあるわけではありません。日本は新興国に比べ、感染症への対策がしっかりとなされています。衛生的にも良好な環境です。

そのため、「日本では感染症と無縁だったのに、海外へ行って、感染症になってしまう・・・」なんてことも容易にあります。

海外へ渡航する際は、なるべく、感染症対策も自分でできる限りはしておきましょう。

微生物の定義/細菌とウイルスの違い/腐るとは?季節性食中毒?

今回は、細菌やウイルスといった「微生物」について学んでいきます。

微生物って何?

微生物って何でしょう?漢字ののままに捉えれば、「微(ちいさな)生物(いきもの)」です。しかし、微生物の「定義」に関しては、多くの変遷をたどってきています。

昔の微生物の定義

微生物、昔は、漢字の通り、「微(ちいさな)生物(いきもの)」と捉えられてきました。具体的には

  • 小さな=顕微鏡で見ることができる
  • 生き物=自己増殖できる(勝手に増える)

この2つが微生物の条件とされていました。これらは、細菌や真菌、原虫に当てはまります。

昔から今に変わって定義が変わった!

しかしながら、「ウイルス」も微生物です。「ウイルス」は顕微鏡では見えませんし、自分で増えることもできないのです。

そこで定義が変わり、「固有のゲノムを持ち、自己の複製が可能」ということが微生物としての条件となっています。

ウイルスと細菌の違いってなんだ?

ウイルスと細菌は違う!だなんてさらっと書きましたが、これらは大きく違います。

増え方の違い

例えば、夏場に食べ物を放置しておけば、そこで「細菌」は繁殖します。一方で、ウイルスが増えることはありません。 

細胞は、栄養や温度、水(湿度)さえあれば、勝手に増えることができるのです。

一方で、ウイルスは、他の生き物の細胞に寄生し、その細胞の体を使って、増えるのです。そのため、ウイルスは、寄生する細胞がないと、死んでしまいます。

例えば、インフルエンザで有名な、インフルエンザウイルスも、空気中にいたら、どんどん死んでしまいます。ただ、空気中から人間の体に入り、人間の細胞に感染することで、ウイルスは生き延び、増殖するのです。

大きさの違い

インフルエンザを引き起こすインフルエンザウイルスは「ヒト」の細胞に感染したりします。

ただ、動物に感染するウイルスばかりではありません。細菌に感染するウイルスもいます。(一般には「ファージ」と呼ばれています。)ウイルスは細菌相手にでさえ寄生するわけですから、ウイルスの方が細菌より小さいことは予想できるでしょう。

数値にしてみると大きく異なります。

  • ウイルスは0.01~0,1μm
  • 細菌は10~100μm

ウイルスと細菌は大きさの面でも大分違うことが見て取れると思います。

「腐る」の違い~ウイルスと細菌

ウイルスと細菌の違いが身近に感じられるのが食中毒です。

 

夏場の食中毒

夏場の食中毒の原因の多くは細菌によるものです。

夏場には温度や湿度は高く、細菌は増殖しやすいです。(自分で勝手に増えていくー自己増殖能)

そのため、食べ物を放置しておくと、どんどん細菌は増え、最終的に食中毒を引き起こします。

冬場の食中毒

では、反対に、冬場の食中毒は何が原因で起きやすいかと言えばウイルスが原因になりやすいです。

冬は寒く乾燥するため、細菌は増えにくいです。

一方で、ウイルスは寒いと「死滅しにくい」という特徴があります。

ウイルスは自己増殖できないため、空気中ではどんどん死んでいくのです。

ただ、寒いと、この死滅のスピードが遅くなるのです。そのため、ウイルスが生存しやすく、ウイルスによる食中毒が起きてしまいます。

違いを書けば

つまり、

  • 夏場は細菌が増殖しやすく
  • 冬場はウイルスは死滅しにくい

ため、夏と冬では、別々の要因が原因になって、食中毒が起きてしまうというわけです。

微生物の分類

ウイルス、細菌以外にも、微生物はたくさんいます。表にすると以下の通りです。

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微生物は、まず、細胞性と非細胞性に分かれます。

細菌は、細胞性の微生物の中でも、特に、原核生物の一つです。

細胞性の微生物には、他にも、「真核生物」の微生物がいて、これらは真菌や原虫です。(真核生物は細胞に核を持ち原核生物は持たないという違いがあります。)

一方、ウイルスは非細胞性の微生物の1つで、他にもプリオンやウイロイドなどがあります。

このように、微生物は分類されています。この分類は大切なので、覚えましょう。

全身麻酔~麻酔で意識がなくなるとは?

今回は「全身麻酔」について書きます。

まず全身麻酔とは?

全身麻酔の特徴

全身麻酔の四要素、といえば、以下の四つがあります。

  1. 意識消失(意識がなくなる)
  2. 鎮痛(痛みがおさまる。痛みを感じなくなる。)
  3. 無動化(筋弛緩など)(動かなくなる)
  4. 反射抑制(反射が抑えられる。)

これらについて、

  • 「2.鎮痛」は鎮痛薬で引き起こせます。
  • 「3.無動化(筋弛緩)」は、筋弛緩剤などでも引き起こせます。
  • 「4.反射抑制」も同様に、筋弛緩剤などでも引き起こせます。

このように2~4については、全身麻酔薬以外でも引き起こすことはできます。

一方で「1意識消失」というものは、全身麻酔の特有の効果です。

全身麻酔薬を投与すると、

  • 意識消失(意識がなくなる)
  • 呼吸停止(呼吸が止まる)
  • 循環抑制(心臓の働きが弱まる)

といった作用も出てくるので、注意が必要です!(医療現場では、循環・呼吸管理を行う)

全身麻酔の歴史

全身麻酔の歴史の始まりは、日本です!といってもよいでしょう。

世界初の全身麻酔下外科手術は1804年、華岡青洲によって行われました。

この全身麻酔薬のために、彼の母は亡くなり、妻も失明したという、深いお話もあります........

そんなところから始まり、今や、全身麻酔はいたるところで使われています。

全身麻酔薬の種類

全身麻酔薬には2種類があります。

  • 吸入麻酔薬(肺からの麻酔薬)
  • 静脈麻酔薬(点滴の麻酔薬)

吸入麻酔薬としては「フッ化物」

静脈麻酔薬としては

などがあります。

麻酔薬の作用機序

全身麻酔は、どうして起きるか明らかにされていない!」なんて話がよく言われています。

ただ、分かっているところもあります。作用機序は、「麻酔薬はGABAA受容体に作用する」ということです。

では、なぜ、「全身麻酔はどうして起こるかわからない!」なんて言うのでしょう?

それは、「全身麻酔で我々の意識がなくなるから」です。GABAA受容体に薬が作用して、全身麻酔が起きるのは分かっているのですが、

  • 「じゃあ、我々の意識がなくなるってどういうこと?」
  • 「そもそも、我々の意識って何?」

みたいな話につながるため、「意識とは何か?」が明確に定義できない今では、「意識がなくなる理由は明らかでない」とするしかないのです。

そのほかの知識

麻酔薬には作用時間があり、一般に持続投与時間が長いほど、そこからの覚醒に時間がかかります。

また、すぐに効く麻酔薬はすぐに効果を失ってしまいます。(手術の導入部分で、すぐに効く麻酔薬を使うことが多い)