医動物学各論~蠕虫~絶対に湖で泳いではいけない!(日本住血吸虫)
これまで、医動物の、原虫について書いてきました。
今回からは、蠕虫について書いていきます。(医動物=原虫+蠕虫)(蠕虫についても大まかに細胞性微生物~真核生物=原虫+蠕虫 - 医学部生の基礎医学こちらで学習しています。)
蠕虫類の分類(復習)
この記事の復習になりますが、蠕虫類は主に、以下に分類されます。
- 線虫類(糸状・ミミズ状)
- 条虫類(頭部+頸部+体節)
- 吸虫類(頭部に吸盤)
線虫類
線虫類としては、以下のものがあります。
- 蟯虫症(昔「ギョウチュウケンサ」があったと思います。)
- 回虫症(土壌媒介寄生虫・レフレル症候群)
- 糞線虫症(土壌媒介寄生虫・自家感染する・レフレル症候群)
- リンパ系フィリア(リンパ組織の炎症反応)
- 回旋糸状虫(皮膚病変・アフリカ・中南米に分布)
- アニサキス(生魚を食べる国・日本に分布。魚類を生で食べることで感染)
糞線虫症は、自家感染(自分が感染源となり、自分に感染させる)を繰り返し、過剰感染となって、重症化します。
アニサキスは、とんでもない腹痛を引き起こします。ただ、体内で数時間で死滅します。無理矢理内視鏡で手術して、アニサキスを取り出すこともできるのですが、それは体への負担が大きいので、結局、アニサキスで苦しむ人は、「数時間その痛みに耐える」というのが今の治療法のようです。
条虫類
条虫は頭部+頸部+片節で構成されています。条虫もいかに分類されます。
- 無鉤条虫(頭部に吸盤・牛肉を食べる地域に分布。ヒンヅー教国にはいない)
- 有鉤条虫(中間宿主はブタ。イスラム教国にはいない)
- 単包条虫(固有宿主はイヌやオオカミ。中間宿主はウシなど。)
- 多包条虫(固有宿主はイヌやオオカミ。中間宿主はげっ歯類)
吸虫症
軟体動物(貝)が中間宿主です。
有名なものは日本住血吸虫(日本独自の物だった。)です。
日本ではもうほとんどいません。(河川のコンクリート化などにより医動物が増える環境がなくなった。)1996年には流行終了宣言がなされています。
体を貫いて移動します。
小腸などに穴が開くため、その穴から、他の細菌などの二次感染が見られます。
対策としては、
- 水との接触を避ける(湖で泳いではいけない!!!)
- 用水路のコンクリート化
- 上下水道の整備
- 中間宿主貝を減らす
以上が行われています。
医動物・原虫の分類「根足・鞭毛・胞子」or「寄生部位による分類」
今回は「医動物」の学習をしていきます。
医動物とは何か?
医動物とは、いわゆる
- 「微生物の内の、細胞性微生物」
- 「細胞性微生物の中でも、特に真核生物」
のことです。
- 微生物の分類方法についてはこちらの記事微生物の定義/細菌とウイルスの違い/腐るとは?季節性食中毒?
- 真核生物についてはこちらの記事で細胞性微生物~真核生物=原虫+蠕虫
このページで、医動物について、もっと詳しく学習していきます。今日は特に、「原虫」について学習します。特に、「原虫の分類方法」について学習します。(医動物=原虫+蠕虫+真菌)
以下、細胞性微生物~真核生物=原虫+蠕虫 で学習た内容を含みます。
原虫類の特徴
原虫類は「運動性ある従属栄養の動物性単細胞真核生物」です。接触、運動、代謝、生殖を単細胞で行います。
- 個体は単一細胞
- 無性生殖(胞子虫類は無性生殖と有性生殖の両方)
このような特徴があります。
原虫類の分類
根足・鞭毛・胞子
原虫類は以下の3つに分けられます。
- 根足虫類(赤痢アメーバ など)
- 鞭毛虫類(アフリカトリパノソーマ・膣トリコモナス など)
- 胞子虫類(マラリア原虫・トキソプラズマ原虫・サイクロスポーラ など)
以上の内容は細胞性微生物~真核生物=原虫+蠕虫 でも学びました。
根足虫類 | 赤痢アメーバ |
アカントアメーバ | |
鞭毛虫類 | ランブル鞭毛虫 |
トリコモナス | |
トリパノソーマ | |
リューシュマニア | |
胞子虫類 | プラスモジウム |
トキソプラズマ | |
クリプトポジウム | |
サイクロスポラ | |
イソスポラ | |
繊毛虫類 | パランチジウム |
今回は別の分類法で学習します。
寄生部位による原虫の分類
寄生部位による原虫の分類もできるのです。
- 腸管寄生原虫
- 血液・組織寄生原虫
- 泌尿生殖器寄生原虫
- 腸管寄生原虫は以下の赤字です。
- 血液・組織寄生原虫は以下の青字です。
- 泌尿生殖器寄生原虫は以下の緑字です。
根足虫類 | 赤痢アメーバ |
アカントアメーバ | |
鞭毛虫類 | ランブル鞭毛虫 |
トリコモナス | |
トリパノソーマ | |
リューシュマニア | |
胞子虫類 | プラスモジウム |
トキソプラズマ | |
クリプトポジウム | |
サイクロスポラ | |
イソスポラ | |
繊毛虫類 | パランチジウム |
完全に言い切れない所もありますが、大まかにはこんな感じです。
寄生部位による分類のメリット
「根足・鞭毛・胞子」による分類は、「原虫の見た目」で分類する方法でした。分かりやすい分類方法です。
では、「寄生部位による分類」のメリットは?
それは「寄生部位が似ているものは、病態なども似ている」という事です。
例えば、「腸管寄生原虫」は下痢を起こすことが多いです。下痢で人間の体から出て、感染を広げたりします。
このように、見ため以外の特徴が、似ていることがあるのです。
このような分類があることも知っておきましょう。
以上「医動物学各論~原虫の分類「根足・鞭毛・胞子」or「寄生部位による分類」」でした。
腸管寄生原虫
腸管寄生原虫は字のごとく、腸管に寄生します。
- 動物との接触
- 飲料水・汚水
- 肉・果物・野菜
などが感染経路となります。
嚢子(シスト)が口から体内に入り、シストは体内で栄養型となり一部はメロゾイドになります。そして、シスト・メロゾイドはは体外に排出され、シストは感染していきます。
赤痢アメーバ
赤痢アメーバ症を引き起こします。
熱帯・亜熱帯の非衛生的な地域で流行しています。
汚染された手や汚染飲食物・汚染水道水などにより、糞口感染を起こします。
- アメーバ赤痢(イチゴゼリー状の粘血便)
- アメーバ性腸炎
を引き起こします。
慢性化すると、以上の症状を数週間ごとに繰り返します。
パロモマイシン・フロ酸ジロニキサニドにて治療します。
ランブル鞭毛虫(ジアルジア)
ジアルジア症を引き起こします。
衛生状態の悪い熱帯・亜熱帯で流行しています。
小動物も感染し、人獣共通感染症です。
性行為でも感染します。(男子同性愛者に多い)
感染経路はシストの糞口感染がメインです。
日本ではほとんど見られなくなっていました。
ただ、最近その数は増えており、再興感染症の一つになっています。
下痢がジアルジア症では有名です。
メトロニダゾール・チニダゾールで治療します。
クリプトスポジウム
クリプトスポリジウム症を引き起こします。
世界で広く分布しています。(3億人程度)
AIDS患者で合併していることが多いです。
家畜の腸管寄生中で有名でした。
汚染された手や汚染飲食物・汚染水道水などにより、糞口感染を起こします。
下痢症・腹痛を起こします。
検便で検査しますが、
健常人では対症療法で改善します。
泌尿生殖器系寄生原虫・膣トリコモナス
性感染のみで広がります。
- 女性:膣炎・外陰部のかゆみ
- 男性:軽症
と性差もあります。
患者とそのパートナーの治療が必須となります。(メトロニダゾール・チニダゾールでの治療を行います。)
原虫・血液・組織寄生原虫
トリパノソーマ科
トリパノソーマ科は、トリパノソーマ属とリューシュマニア属に分けられる。
トリパノソーマ属
アフリカ睡眠病
ブルーストリパノソーマによる病気です。
無治療で3年で死亡してしまいます。
ツェツエバエが媒介します。アフリカに多い
シャーガス病(別名:アメリカトリパノソーマ症)
クルーズトリパノソーマによる病気で中南米に多い。
サシガメによる媒介や輸血により感染する
リューシュマニア属
リューシュマニア症を引き起こす人獣共通感染症です。
サシショウバエが媒介します
地域によって症状は異なります。
- ドノバン リューシュマニア(内臓リューシュマニア症・発熱・肝脾腫)
- 熱帯 リューシュマニア(皮膚リューシュマニア症・皮膚結節)
- ブラジルリューシュマニア(粘膜皮膚リューシュマニア症・粘膜などの潰瘍や欠損)
- メキシコリューシュマニア(メキシコリューシュマニア症・顔などの損傷)
トキソプラズマ
終宿主は猫。
つまり、寄生中の有性生殖は、猫の体内で行われる。
ほ乳類(ヒト)は中間宿主である。
(宿主については微生物の宿主とは・固有宿主・中間宿主・多宿主?人体への寄生部位?)
有性生殖と無性生殖(ヒトの体内)をおこなう。
母から子に垂直感染することもある。
先天性トキソプラズマ症といい、
- 水頭症
- 脈絡膜炎による視力障害
- 脳内石灰化
- 精神運動機能障害
を引き起こす。
血清学的診断で明らかにする。
関連事項:TORCH症候群
母体の症状は軽微にもかかわらず、
妊娠中の感染によって、胎児に重篤な感染症や、奇形を引き起こす
疾患の総称。
- トキソプラズマ症
- 水痘・帯状疱疹
- 梅毒
- 風疹
- EB virus
- 単純ヘルペスウイルス
- サイトメガロウイルス
などがこれである。
新興感染症が広まる理由・SARS/エボラ/デング
最近、SARSやエボラ出血熱など、新興感染症がニュースを賑わしていました。今回はそんな新興感染症について学習します。
新興感染症
新興感染症とは
新興感染症とはWHOで以下のように定義されています。
「ヒトの間で初めて出現したもの、もしくは、以前からあったものが、急速に数、地理的に範囲を拡大したもの。」
毎年のように、新興感染症が出現しています。
新興感染症はなぜ増えてきた?
新興感染症はどこから?
これらの新興感染症の多くは、宇宙から降ってきたわけではありません。
「他の動物」からヒトに、ウイルスなどが移されて新興感染症が起きています。つまり、新興感染症の多くは、人獣共通感染症です。
なぜ増えてきた?
増えてきた理由は、
- 「人口が増えてきたため」
- 「今まで人が住んでいなかったところにも人が住むようになり」
- 「様々な環境に暴露されるようになった」ため、
新興感染症が増えています。
今まで人が住んでなかったところに人が進出したことで、そこにいる動物がもっていた病気が感染症になります。
他にも、「人の移動が活発になったため」も理由の一つです。
昔なら、大変な感染症がアフリカの奥地で流行したとします。もし流行しても、感染症はアフリカの奥地の部族を全滅させるだけでした。アフリカの奥地の村1つが全滅しても、その感染症が、世界的に広まることもありませんでした。
ただ、今は人の移動が活発です。アフリカの奥地の民族の人も、アフリカの国の都心に来たりします。そこで、感染症が広がるのです。
昔から危惧されていた新興感染症
このような事態は昔から危惧されていました、NHK特集や映画でも話題になっていました。(映画「アウトブレイク」は面白いらしい)
SARS
初の世界的流行SARS
そのように危惧されてきた新興感染症が、最初に世界的に広まったのが2003年のSARSと言われています。
それまで(2003年以前)全く知られていなかったSARSコロナウイルスが急に感染し、拡大していったのです。
SARSの始まり
SARSは初め、中国の広東州から始まりました。
広東州では色々な種類の肉を食べる風習があります。(イヌ・ネコ・タヌキ・他にもいろいろ)
実際にどの動物がヒトにSARSコロナウイルスを感染させたのかは分かっていません。
ただ、この種のウイルスの大抵の自然宿主はコウモリであることが多いそうです。コウモリは、色々な動物と接触します。そそ肉をヒトが食べたと言われています。(食べた肉としての第一候補はハクビシンらしいです。)
SARSが広まった
感染が拡大するまでは、ハクビシンの近くにいる人のみが感染していました。
ある時、その感染者の一人が、大学病院で、また転院の過程、転院先で感染を拡大させました。(80-90人に感染させたと言われています。)
ここから、どんどん世界的に感染が広まります。
その原因は、別の「たった一人の」感染者がひろめたのです。
大学病院の医師が、感染したまま、ホテルに滞在し、ここで感染を拡大します。このホテルから多くの国に感染が広がったと言われています。
まとめると
もともとはコウモリがもっていたとされるウイルスが、ハクビシンを介して人に伝わり、「たった一人のの感染者」が感染を広げ、更に別の「たった一人の感染者」がさらに感染を広げたのです。(以下これの繰り返し)
総括
今回は、新興感染症と、その代表例のSARSについて学びました。他の新興感染症も、
同じようなものです。
他の新興感染症をニュースで見たら、「こんな感じなんやなあ」と思いながら、ニュースを見てみてください。
微生物の宿主まとめ(固有宿主・中間宿主・多宿主・人体への寄生部位)
宿主の定義
「宿主」とは微生物の話をするときに必ず出てくる言葉です。
medudent-basicmedicalscience.hatenablog.com
こちらの記事に書いてありますが、ウイルスは単体では生存できません。何か他の生物(細菌やヒトなど)に寄生することで生存できます。
この寄生先のことを宿主といいます。
宿主の分類
まず、宿主の分類を覚えましょう。
宿主は固有宿主と非固有宿主に分かれます。
この分類の仕方は、「微生物から見た宿主先」の分け方です。
- 固有宿主:微生物が体内で発育・増殖できる宿主
- 非固有宿主:体内では増殖できない宿主
このような違いです。つまり、
- 固有宿主の中では、微生物は増えることはできるけど、
- 非固有宿主の中では増えない(ただ間借りさせてもらっている)
と違うわけです。
固有宿主について
固有宿主
固有宿主の中では、微生物は増えます。微生物は宿主内で成長し、子供まで生んだりします。
多宿主性
多宿主性とは
多宿主性とは「固有宿主が複数あること」です。
(必ずしもすべての微生物が多宿主性を有するとは限りません。固有宿主が一つだけの微生物もいます。)
つまり、他宿主性のある微生物Aは、ヒトに寄生してヒトの体の中で増えることもあるし、ウシに寄生してウシの中で増えることもあります。
このように、複数の固有種がいる微生物について「多宿主性がある」と言います。
主宿主と保虫宿主
多宿主性の微生物は、たくさんの宿主先があるわけですが、その中でも、特に大切な宿主先とどうでもよい宿主先があります。
- 複数の固有宿主の中で重要なものを主宿主
- 重要でない宿主先を保虫宿主
といいます。
例えば、日本住血吸虫という微生物がいます。
こいつは、ヒトを主宿主とします。一方で、保虫宿主として、水牛やブタがいます。
つまり、この微生物の感染を止めるためには、「ヒト」と「ブタなど保虫宿主」の
両方に感染対策をしなければなりません。
「ヒト」のみで感染を止めても、「ブタ」からヒトに感染は広まるため、感染を止めるのが難しいのです。
非固有宿主
非固有宿主とは
微生物は、寄生先で増えることができません。
寄生先では死滅するか、幼虫のまま生きることになります。
非固有宿主の分類
非固有宿主は
- 中間宿主
- 待機宿主
の2つに分けられます。では、この2つについて見ていきましょう。
中間宿主
中間宿主は、「発育の場を提供する」非固有宿主です。(発育するのみであって増殖はしない。)
中間宿主の中で微生物は成長します。そして、この中間宿主が別の生き物に食べられます。そうすると、微生物も一緒に他の生物の中に移動します。
こうして、微生物は他の生物に移動していくのです。
待機宿主
待機宿主は反対に、「発育の場にならない」非固有宿主です。(増殖もしないし、発育もしない)
微生物は待機宿主の中で、次の寄生先を待っています。
幼虫は、この待機宿主の中で、生きます。
ただ、成長などはせず、次の寄生先が来てくるまで待ちます。
細菌の分類・増え方など
この図は昨日含めて何度も見せられていると思います。
真核生物・ウイルスについて学びたい方はこちら。
今日は「原核生物ー細菌」について学びます。
細菌についての基本情報
形態
細菌は以下のような形態があります。
- 球菌(球状)
- 桿菌(細長い棒状・円筒状)
- らせん菌(らせん状)
大きさは1μm前後です。
分類
ここはとても大切です!
細菌の分類方法には以下の二つがあります。
- 「形態」
- 「グラム染色」
グラム染色とは、簡単に言えば、染色方法の一つです。(クリスタルバイオレットで染めます)この染色方法で細菌が染まるか染まらないかで分類します。
グラム染色で染まるか否かで以下の二つに分類されます。
- グラム陽性
- グラム陰性
グラム陽性と陰性・細菌の形でさらに分類されます。
- グラム陽性の球菌
- グラム陽性の桿菌
- グラム陽性のらせん菌(あまりない)
- グラム陰性の球菌
- グラム陰性の桿菌
- グラム陰性のらせん菌
このように分けられます。
代表的な菌などは以下の通りです。(分類方法と併せて覚えちゃってください!)
グラム陽性 | グラム陰性 | |
球菌 | 黄色ブドウ球菌 | 髄膜炎菌 |
肺炎球菌 | 淋菌 | |
桿菌 | 炭疽菌 | 大腸菌 |
破傷風菌 | サルモネラ | |
結核菌 | インフルエンザ菌 | |
・ | レジオネラ | |
らせん菌 | ・ | カンピロバクター |
・ | ヘリコバクター |
グラム陽性とグラム陰性
なんでわざわざ、グラム陰性、グラム陽性などと分けるのか?
それは、「アルコール消毒できるか?」をグラム染色で決められるからです。
- グラム陽性はアルコールで処理されない
- グラム陰性はアルコールで処理できる
という違いがあります。
いろいろなところでアルコール消毒が行われていますが、アルコールだけでは消毒しきれない菌もあるようです。
細菌の代謝
発酵と好気呼吸
細菌も動物ですから、エネルギーを必要とします。
このエネルギーの産生経路は
- 発酵(酸素は不要)
- 好気呼吸(酸素は必要)
以上の2つがメインとなります。
酸素が好き?嫌い?好きではない?
僕たちには食べ物に好き嫌いがあります。
ナスビが好きだったり嫌いだったり、はたまた、好きでも嫌いでもなかったり・・・
細菌の酸素への好き嫌いも同様です。
- 偏性好気性:増殖に酸素を必要とする。
- 通性嫌気性:酸素の有無を問わず発育する。ただ、酸素があれば発育は良好。
- 偏性嫌気性:酸素があると死滅してしまう。
このように、細菌ごとに、「酸素が好きか?嫌いか?」が分かれています。
ウイルス総まとめ~インフルエンザはなぜ毎年流行るのか?
今回は「ウイルス」について学習します。
真核生物・細菌について学びたい方はこちら
ウイルスとは?微生物とは?
以前にも書きましたが、ウイルスは原義(初めの定義)での微生物ではありません。
厳密な意味での「生物」ではないのです。
なぜなら、自己増殖ができないから.....(ゲノムとタンパクのみはある)
宿主の細胞を使うことで、増殖が可能です。
大きさもかなり小さく、細菌よりはるかに小さいです。
今回学習する「ウイルス」はそれだけ小さく、代謝も変わり者であると認識しておいてください!
ウイルスの基本構造
ウイルスは
- 核酸(DNAまたはRNA)
- カプシド(核酸を保護するタンパクの殻)
- エンベロープ(脂質二重膜) と 膜たんぱく (無いものも)
で構成されています。それぞれについて見ていきましょう。
核酸について
核酸はDNAもしくはRNAです。ここで分類がなされます。
- 核酸がDNAのものをDNAウイルス
- 核酸がRNAのものをRNAウイルス
と言います。
DNAウイルス
DNAウイルスとはDNAを核酸とするウイルスのことです。2本鎖のDNAが多いです。
(例外に
- 一本鎖のパルボウイルス
- 不完全環状二本鎖のB型肝炎ウイルス
があります)
宿主の細胞核に寄生し、宿主の細胞の複製・転写酵素で増殖します。
RNAウイルス
RNAウイルスについては少し複雑です。
RNAウイルスはDNAウイルスと反対に、RNAをゲノムとするウイルスですが、
- プラス鎖RNA
- マイナス鎖RNA
の二種類があります。
(ここから10行ほど、専門的なお話になります。ご容赦ください。その下に、「インフルエンザはなぜ流行るのか?」について書いてあります。)
プラス鎖RNA
ウイルスのゲノムRNAはmRNAに同じです。
核酸に感染して、mRNAとして機能します。
増殖の際には、まず、プラス鎖RNAにより、転写によりRNAポリメラーゼを作ります。このRNAポリメラーゼはプラス鎖RNAから、マイナス鎖RNAを作ります。さらにこのマイナス鎖RNAからプラス鎖RNAを作り、増殖していきます。
プラス鎖RNAから、翻訳により、タンパクが合成されます。
1本鎖・プラス鎖RNAウイルス・ポリオ・手足口病・デング熱・風疹・ノロウイルス
マイナス鎖RNA
ゲノムはmRNAと相補的な配列です。
つまり、mRNAとしては働きません。
遺伝子発現のためには、RNAからRNAへの転写が必要です。
ウイルスはRNA依存性RNAポリメラーゼを持ちます。
増殖の際には、マイナス鎖RNAは、ウイルスが元々もっていたRNAポリメラーゼにより、プラス鎖RNAを作ります。
更にここからポリメラーゼにより、マイナス鎖RNAができます。また、プラス鎖DNAから、タンパクが作られます。
ここまで、多少難しいです。(後々、図など書き加えます。ご了承ください。)
1本鎖・マイナス鎖RNAウイルス・インフルエンザ・おたふく・エボラ
インフルエンザはなぜ毎年流行るのか?
インフルエンザはウイルスです。インフルエンザウイルスはRNAウイルスです。
RNAはDNAより、変化をきたしやすいです。(人間の体はDNAでできています。DNAが変異を起こすと、がんになることがあります。一方で、通常とは違う個体に「進化する」可能性も秘めてはいます。)
そんなわけで、RNAウイルスは、変化しやすいです。
そのため、毎年毎年、インフルエンザウイルスは、形を変えて、登場します。
ポケッ〇モンスターで例えますと、ウイルスが
- ある年は水タイプで、
- ある年はほのおタイプで、
- ある年は草タイプで出てくる
みたいな感じです。
毎年毎年違う形で出てくるので、体も対応が難しかったり、ワクチンが毎年必要になったりします。
そんなわけで、インフルエンザは毎年よく流行してしまうのです。
ウイルスの基本情報(まとめ)
「ウイルスは核酸とカプシド(拡散を保護するタンパク質の殻)」が基本構造です。
そこに、「脂質二重膜のエンベロープ+膜たんぱく」がさらに周りを覆っているときもあります。
核酸は主に2本差鎖のDNAウイルスと主に1本鎖のRNAウイルスがあります。RNAウイルスの方が変異しやすいのでした。(インフルエンザウイルスなど)
ウイルスの分類と各論
・RNAウイルスとして
- 1本鎖プラス鎖RNAウイルス
- 1本鎖マイナス鎖RNAウイルス
- 2本鎖RNAウイルス
- 逆転写酵素を持つウイルス
・DNAウイルス
このような分類がなされています。
RNAウイルス
1本鎖プラス鎖RNAウイルス
1本鎖・プラス鎖RNAウイルス・ポリオ・手足口病・デング熱・風疹・ノロウイルス
- ピコルナウイルス科
- カリシウイルス科
- アストロウイルス科
- トガウイルス科
- フラビウイルス科
- ヘペウイルス科
- コロナウイルス科
1本鎖マイナス鎖RNAウイルス
1本鎖・マイナス鎖RNAウイルス・インフルエンザ・おたふく・エボラ
- オルソミクソウイルス科
- パラミクソウイルス科
- ニューモウイルス科
- ラブドウイルス科
- アレナウイルス科
- フィロウイルス科
- ブニヤウイルス科
2本鎖RNAウイルス
- レオウイルス科
逆転写酵素を持つウイルス
- レトロウイルス科
- ヘバドナウイルス科
DNAウイルス
- ポックスウイルス科
- ヘルペスウイルス科
- アデノウイルス科
- ハプローマウイルス科
- ポリオーマウイルス科
- パルボウイルス科
細胞性微生物~真核生物=原虫+蠕虫
今回はこの分類のうちの、「真核生物」つまり、細胞性微生物の内の1つについて書いていこうと思います。(細菌・ウイルスについても学習しました!気になる方は下のページをご覧ください!)
真核生物の分類
全体から見た真核生物
この図からわかる通り、真核生物は細胞性の微生物です。
原核生物との違いとは、「細胞に核があるかどうか?」(真核生物には核があります。原核生物にはありません。)
この真核生物、実は、更に、原虫と蠕虫という2つに分類されるのです!
原虫と蠕虫
原虫と蠕虫、どちらも真核生物ですから、細胞には核がある、細胞性の微生物です。
ただ、
- 原虫:単細胞で無性生殖(胞子虫類以外)
- 蠕虫:多細胞で有性生殖+中間宿主が必要
という違いがあります。
(中間宿主とは、微生物が子供から大人になるときに寄生させてもらう宿主=間借りさせてもらう生物と考えてもらえば大丈夫です!)
どちらかと言えば、原虫は生物学的に、蠕虫より雑魚です。
とりあえず、今は、真核生物=原虫+蠕虫であり、これらの2つは大きく異なることは確認しておいてください!
では、これらの各論を見ながら、それぞれの微生物について理解を深めていきましょう。
ここから覚える内容が多くなってきますが、ついてきてください!
原虫類Protozoa
原虫類の特徴
原虫類は「運動性ある従属栄養の動物性単細胞真核生物」と定義されます。
- 個体は単一細胞
- 無性生殖(胞子虫類は無性生殖と有性生殖の両方)
このような特徴があります。
原虫類の分類
原虫類はさらに、以下の3つに分けられます。
- 根足虫類
- 鞭毛虫類
- 胞子虫類
これらについてもさらっと見ておきましょう。
根足虫類
根足生物には代表的なものとして赤痢アメーバがあります。
赤痢アメーバには栄養型と嚢子型の二つがあります。
栄養型はいわゆる「アメーバ」です。嚢子型は「殻にこもったアメーバ」です。
通常、環境中には「嚢子」で存在します。(殻をかぶっている)
それが体に取り込まれると、小腸で、栄養型になります。(殻を脱いで、増える)増えながら、「嚢子」を増やします。(他の固体にも感染する準備をする)
嚢子は便として排出され、環境中に、嚢子が放出されます。そして、また、誰かに感染しにいきます。
鞭毛虫類
鞭毛虫類には「鞭毛」があります。
- アフリカトリパノソーマ
- 膣トリコモナス
などが代表として上げられます。
トリパノソーマは血液組織内に、膣トリコモナスは消化器などに感染します。
胞子虫類
胞子虫類は根足虫類や鞭毛虫類と違って、有性生殖も無性生殖もします。(通常の原虫では無性生殖のみ)
- マラリア原虫
- トキソプラズマ原虫
- サイクロスポーラ
などが代表として挙げられます。
蠕虫類helminth
蠕虫類の特徴
蠕虫類の特徴には以下のものが挙げられます。
- 多細胞の寄生体である
- 寄生に対応した進化をしている(体に吸盤があったりする)
- 中間宿主を必要とするものが多い
- 生殖器官も発達(有性生殖のみ)
(先ほども書きましたが、中間宿主とは、微生物が子供から大人になるときに寄生させてもらう宿主=間借りさせてもらう生物、と捉えてもらえば大丈夫です!くわしくはこちらへ微生物の宿主とは・固有宿主・中間宿主・多宿主?人体への寄生部位? )
このような蠕虫類にも、原虫類と同様に、細かい分類がまたあります。
蠕虫類の分類
蠕虫類は主に、
- 線虫類(糸状・ミミズ状)
- 条虫類(頭部+頸部+体節)
- 吸虫類(頭部に吸盤)
に分けられます。ではまた、それぞれについて見ていきましょう。
*念のため確認*今から見ていくのは、微生物の細胞性の物の内、真核生物の、蠕虫類について見ます。
線虫類
線虫には、例えば蟯虫がいます。ギョウチュウです。子供の時、ギョウチュウケンサなんてのをしたことがある方もおられるのではないでしょうか?(最近はもうないらしいです。)
条虫類
条虫類は「サナダ虫」などがそれです。
頭部と頸部、そして体節からなっています。頭部と頸部があれば、いくらでも成長できるため、頭部と頸部が体から除去する必要があります。
吸虫類
吸虫類は吸盤を持つ微生物で中間宿主が必要です。
中間宿主については、こちらへ
微生物の宿主とは・固有宿主・中間宿主・多宿主?人体への寄生部位?
まとめ
真核生物に関しては、このような図が描けます。
もう一度確認しておきますと、今書いているのは「真核生物について」です。真核生物は細胞性微生物の内の一つです。
ここまでの分類をしっかりと確認して、この記事をもう一度復習してみても良いかもしれません。覚えるのは大変ですが、頑張りましょう。
追記
細菌・ウイルスについても学習しました!
気になる方は下のページをご覧ください!