グラム陽性菌
グラム陽性桿菌
グラム陽性桿菌は、以下に分けられます。
- バシラス属
- クロストリジウム属
- コリネバクテリウム属
- リステリア属
バシラス属とクロストリジウム属は「芽胞菌」と言われています。
種々の物理化学的刺激に抵抗性を持つ、「芽胞」という状態になるときがあります。
「芽胞」であるときは、休眠状態なので、増えませんが、かわりに死にません。
「発芽→栄養型細胞(増殖する)→芽胞形成→休眠→発芽→・・・」とサイクルを繰り返します。
こうすることで、無駄死にすることなく増えていきます。
バシラス属
大型のグラム陽性桿菌です。
- 炭疽菌
- セレウス菌
があります。
炭疽菌
鞭毛がなく運動性もないです。
- 乾熱で140度3時間
- 温熱で121度5-10分
これくらい加熱しないと死にません。乾燥状態でも数年以上生存します。(芽胞の強み)
もともとは野生草食動物ヒツジやヤギの病気でした。(牧草などに芽胞がいた。)
イラク・イラン・トルコ・パキスタン等に多いです。
- 経皮感染(皮膚炭疽)
- 吸入感染(肺炭疽)
- 経口感染(腸炭疽)
これの経路で感染して、血行性・リンパ行性で全身に広がり、敗血症を引き起こします。
細菌によるテロなどでも、炭疽菌は用いられています。(オウム真理教なども試みたと言われています。)
セレウス菌
炭疽菌と異なり、鞭毛をもち、運動性もあります。
中毒を引き起こします。
- 嘔吐型のセレウリド(熱で不活化されない。1-6時間で発症)
- 下痢型のエンテロトキシン(熱で不活化される。8-16時間で発症)
これら2つで中毒が引き起こされます。
食中毒への対策としては、「細菌の増殖の時間をなくす」つまり、「作ったらすぐ食べる」ことで、菌の増殖を防ぐのです。
クロストリジウム属
ほとんど編成嫌気性菌です。
土壌に生息しており、怪我をしたときなどに、傷口から、土壌に交じって体内に入ってきます。
菌としては、
- 破傷風菌
- ボツリヌス菌
- ウェルシュ菌
- ディフィシル菌
があります。
破傷風菌
破傷風毒素が病気(破傷風)を引き起こします。(潜伏期間が3-21日)
全身性破傷風を引き起こします。
痙性麻痺を引き起こします。(わずかなもの音や光などの刺激で、痙攣を引き起こします。)
ボツリヌス菌
ボツリヌス毒素が病気のもとになります。
弛緩性麻痺(痙性まひと反対)
呼吸筋がマヒすることで致死性です。
潜伏期間が2-40時間で、下痢や嘔吐も引き起こします。
ウェルシュ菌
20-50度で増殖します。(加熱不十分な食材で増殖します。)
- ガス壊疽(毒素により)
- 食中毒(エンテロトキシン産生菌)
などの病状が見られます。
ディフィシル菌
ディフィシル菌は多くの抗菌薬に耐性があり、
ヒト・動物の腸管に生息しています。
腸内細菌のバランスが破たん(菌交代減少)により、偽膜性大腸炎を引き起こします。
コリネバクテリウム属
非運動性で、芽胞形成はありません。(芽胞菌はバシラス属とクロストリジウム属です。)
ジフテリア菌が有名です。ジフテリア(病名)を引き起こします。
飛沫感染で広がり、上気道粘膜で増殖し。気道を閉塞させ、、また、血漿に毒素が流れることで。
心筋障害・ジフテリア後マヒを引き起こします。
コリネバクテリウムは「放射菌」の一つです。
リステリア属
リステリア菌があります。
人畜共通感染症のリステリア症を引き起こします。
敗血症・髄膜炎が有名です。
グラム陽性球菌
グラム陽性菌には球菌・桿菌があります。ここからは、グラム陽性球菌を扱います。
グラム陽性球菌には以下3つに分かれます。
- ブドウ球菌属(genus Staphylococcus)
- レンサ球菌属(Streptococcus)
- 腸球菌属(Enterococcus)
ブドウ球菌もレンサ球菌も菌の名前として、人生で一回は聞いたことがあるかもしれません。
ではそれぞれについて学習していきましょう。
ブドウ球菌属
ブドウ球菌属は
- 非運動性
- 通性嫌気性
という特徴があり、20種類以上あります。
代表的なものとしては、いかのものがあります。
- 黄色ブドウ球菌(腸管毒素:スーパー抗原・食中毒)
- 表皮ブドウ球菌(皮膚常在菌)
- 腐性ブドウ球菌(尿道周囲の細菌叢・女性の尿路感染症)
レンサ球菌
- 通性嫌気性菌
- 非運動性
赤血球を溶血する溶毒素を持ちます。
- α溶血性:不完全溶血・緑色不明瞭
- β溶血性:完全溶血・緑色明瞭
- γ溶血性:非溶血
レンサ球菌にもいろいろな種類があります。
- 化膿レンサ球菌(A型レンサ球菌)(急性糸球体腎炎など)
- B型β溶血性連鎖球菌(直腸常在菌)
- 肺炎レンサ球菌(α溶血)(急性細菌性肺炎)
腸球菌
腸球菌は、名前の通り、腸管に存在します。
腸管は強い酸性条件になったりしますが、腸管で暮らしています。つまり、「非常に厳しい環境」でも生存できる菌なのです。
日和見感染症を引き起こします。
院内感染(病院内で感染が広がること)も引き起こすことで有名です。
院内で感染が広がるのは、「バンコマイシン耐性腸球菌」つまり、バンコマイシン(グリコペプチド系の抗菌薬)がきかないものです。
薬(バンコマイシン)が効かないため、体が弱っている人にどんどん感染していってしまいます。(院内感染)