ウイルス総まとめ~インフルエンザはなぜ毎年流行るのか?
今回は「ウイルス」について学習します。
真核生物・細菌について学びたい方はこちら
ウイルスとは?微生物とは?
以前にも書きましたが、ウイルスは原義(初めの定義)での微生物ではありません。
厳密な意味での「生物」ではないのです。
なぜなら、自己増殖ができないから.....(ゲノムとタンパクのみはある)
宿主の細胞を使うことで、増殖が可能です。
大きさもかなり小さく、細菌よりはるかに小さいです。
今回学習する「ウイルス」はそれだけ小さく、代謝も変わり者であると認識しておいてください!
ウイルスの基本構造
ウイルスは
- 核酸(DNAまたはRNA)
- カプシド(核酸を保護するタンパクの殻)
- エンベロープ(脂質二重膜) と 膜たんぱく (無いものも)
で構成されています。それぞれについて見ていきましょう。
核酸について
核酸はDNAもしくはRNAです。ここで分類がなされます。
- 核酸がDNAのものをDNAウイルス
- 核酸がRNAのものをRNAウイルス
と言います。
DNAウイルス
DNAウイルスとはDNAを核酸とするウイルスのことです。2本鎖のDNAが多いです。
(例外に
- 一本鎖のパルボウイルス
- 不完全環状二本鎖のB型肝炎ウイルス
があります)
宿主の細胞核に寄生し、宿主の細胞の複製・転写酵素で増殖します。
RNAウイルス
RNAウイルスについては少し複雑です。
RNAウイルスはDNAウイルスと反対に、RNAをゲノムとするウイルスですが、
- プラス鎖RNA
- マイナス鎖RNA
の二種類があります。
(ここから10行ほど、専門的なお話になります。ご容赦ください。その下に、「インフルエンザはなぜ流行るのか?」について書いてあります。)
プラス鎖RNA
ウイルスのゲノムRNAはmRNAに同じです。
核酸に感染して、mRNAとして機能します。
増殖の際には、まず、プラス鎖RNAにより、転写によりRNAポリメラーゼを作ります。このRNAポリメラーゼはプラス鎖RNAから、マイナス鎖RNAを作ります。さらにこのマイナス鎖RNAからプラス鎖RNAを作り、増殖していきます。
プラス鎖RNAから、翻訳により、タンパクが合成されます。
1本鎖・プラス鎖RNAウイルス・ポリオ・手足口病・デング熱・風疹・ノロウイルス
マイナス鎖RNA
ゲノムはmRNAと相補的な配列です。
つまり、mRNAとしては働きません。
遺伝子発現のためには、RNAからRNAへの転写が必要です。
ウイルスはRNA依存性RNAポリメラーゼを持ちます。
増殖の際には、マイナス鎖RNAは、ウイルスが元々もっていたRNAポリメラーゼにより、プラス鎖RNAを作ります。
更にここからポリメラーゼにより、マイナス鎖RNAができます。また、プラス鎖DNAから、タンパクが作られます。
ここまで、多少難しいです。(後々、図など書き加えます。ご了承ください。)
1本鎖・マイナス鎖RNAウイルス・インフルエンザ・おたふく・エボラ
インフルエンザはなぜ毎年流行るのか?
インフルエンザはウイルスです。インフルエンザウイルスはRNAウイルスです。
RNAはDNAより、変化をきたしやすいです。(人間の体はDNAでできています。DNAが変異を起こすと、がんになることがあります。一方で、通常とは違う個体に「進化する」可能性も秘めてはいます。)
そんなわけで、RNAウイルスは、変化しやすいです。
そのため、毎年毎年、インフルエンザウイルスは、形を変えて、登場します。
ポケッ〇モンスターで例えますと、ウイルスが
- ある年は水タイプで、
- ある年はほのおタイプで、
- ある年は草タイプで出てくる
みたいな感じです。
毎年毎年違う形で出てくるので、体も対応が難しかったり、ワクチンが毎年必要になったりします。
そんなわけで、インフルエンザは毎年よく流行してしまうのです。
ウイルスの基本情報(まとめ)
「ウイルスは核酸とカプシド(拡散を保護するタンパク質の殻)」が基本構造です。
そこに、「脂質二重膜のエンベロープ+膜たんぱく」がさらに周りを覆っているときもあります。
核酸は主に2本差鎖のDNAウイルスと主に1本鎖のRNAウイルスがあります。RNAウイルスの方が変異しやすいのでした。(インフルエンザウイルスなど)
ウイルスの分類と各論
・RNAウイルスとして
- 1本鎖プラス鎖RNAウイルス
- 1本鎖マイナス鎖RNAウイルス
- 2本鎖RNAウイルス
- 逆転写酵素を持つウイルス
・DNAウイルス
このような分類がなされています。
RNAウイルス
1本鎖プラス鎖RNAウイルス
1本鎖・プラス鎖RNAウイルス・ポリオ・手足口病・デング熱・風疹・ノロウイルス
- ピコルナウイルス科
- カリシウイルス科
- アストロウイルス科
- トガウイルス科
- フラビウイルス科
- ヘペウイルス科
- コロナウイルス科
1本鎖マイナス鎖RNAウイルス
1本鎖・マイナス鎖RNAウイルス・インフルエンザ・おたふく・エボラ
- オルソミクソウイルス科
- パラミクソウイルス科
- ニューモウイルス科
- ラブドウイルス科
- アレナウイルス科
- フィロウイルス科
- ブニヤウイルス科
2本鎖RNAウイルス
- レオウイルス科
逆転写酵素を持つウイルス
- レトロウイルス科
- ヘバドナウイルス科
DNAウイルス
- ポックスウイルス科
- ヘルペスウイルス科
- アデノウイルス科
- ハプローマウイルス科
- ポリオーマウイルス科
- パルボウイルス科