1本鎖・マイナス鎖RNAウイルス・インフルエンザ・おたふく・エボラ
ウイルス学の各論では、ウイルスの名前をじゃんじゃん覚えていきます。
medudent-basicmedicalscience.hatenablog.com
ここで
- DNAウイルスかRNAウイルスか
- 1本鎖DNA(RNA)ウイルスか2本鎖DNA(RNA)ウイルスか
- (1本鎖RNAウイルスなら)プラス鎖かマイナス鎖か
による分類を書きました。(今後も使うのでぜひ復習なさってください。)今回はマイナス鎖RNAウイルスを学習します。
1本鎖・マイナス鎖RNAウイルス
1本鎖マイナス鎖RNAウイルスには以下のものがあります。
- オルソミクソウイルス科
- パラミクソウイルス科
- ニューモウイルス科
- ラブドウイルス科
- アレナウイルス科
- フィロウイルス科
- ブニヤウイルス科
ではそれぞれについて見ていきましょう!
オルソミクソウイルス科・インフルエンザ
オルソミクソウイルスは核内で複製されます。(RNAウイルスとしては例外的です。)
オルソミクソウイルスと言えばインフルエンザです。
毎年受験生を困らせたり・・・・。
インフルエンザにはA型・B型などがあることは皆様ご存じなことかもしれません。
毎年少しずつ、RNAの情報を変えたり、他のウイルスとリアソートメントを起こして、色々な種類のインフルエンザウイルスが生まれています。
そのためパンデミックがおきたりするのです。
パラミクソウイルス科・おたふくかぜ
パラミクソウイルスはムンプスウイルス感染症、流行性耳下腺炎(いわゆるおたふくかぜ)を引き起こします。
麻疹です。
麻疹・風疹と対になってよく言われますが、
- 麻疹はマイナス鎖RNAウイルス、
- 風疹はプラス鎖RNAウイルス(トガウイルス)
と種類が異なります。
ニューモウイルス科
ニューモウイルスとしてはRSウイルスが有名です。
鼻風邪様症状のチンパンジーからも分離されています。
乳幼児の呼吸器に感染します。
ラブドウイルス科
ラブドウイルスとしては狂犬病ウイルスが有名です。
狂犬病は一度かかるとほぼ死んでしまいます。
日本には狂犬病ウイルスがいません。
そのため、日本には狂犬病の治療手段がないです。
海外でイヌなどにかまれたら、すぐ現地の病院に行きましょう。
日本で治療しようと帰国しても無理です。
世界では毎年55000人死亡しています。
アレナ・ブニヤ・フィロウイルス
アレナ・ブニヤ・フィロウイルスは、「出血熱ウイルス」です。
出血熱ウイルスは、感染症としては、致死率が高いものとなります。
多くが人獣感染症です。
アレナウイルス科
アレナウイルスとしては、「ラッサ熱」が有名です。
ラッサ熱の患者の1/3に出血傾向がられます。
フィロウイルス科
フィロはfilumと書けます。ラテン語で糸という意味です。ラテン語で糸というように棒状のウイルスです。
有名な病気としてエボラウイルス病があります。アフリカで一時期大流行しました。
ブニヤウイルス科
ブニヤウイルス科としては、クリミア・コンゴ出血熱が有名です。
死亡率は30%程度です。
1944年1945年にクリミア半島で流行したことからこの名前が付きました。
以上、マイナス鎖RNAウイルスでした。
DNAウイルスHPV/りんご病/ヘルペス
ウイルス学の各論では、ウイルスの名前をじゃんじゃん覚えていきます。
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ここで
- DNAウイルスかRNAウイルスか
- 1本鎖DNA(RNA)ウイルスか2本鎖DNA(RNA)ウイルスか
- (1本鎖RNAウイルスなら)プラス鎖かマイナス鎖か
による分類を書きました。
(今後も使うのでぜひ復習なさってください。)
今回はDNAウイルスを学習します。
DNAウイルス
DNAウイルスはその名の通り、DNAを核酸とするウイルスです。
二本鎖のDNAが多いです。
例外としては以下の二つがあります。
- パルボウイルスが一本鎖
- B型肝炎ウイルスが環状不完全二本鎖
宿主細胞の核で、宿主細胞のDNAと一緒に複製されることが多いです。
種類は以下のようなものがあります。
- ポックスウイルス科
- ヘルペスウイルス科
- アデノウイルス科
- パピローマウイルス科
- ポリオーマウイルス科
- パルボウイルス科
では、それぞれについて見ていきましょう。
ポックスウイルス科
ポックスウイルスは、DNAウイルスなのに、宿主の細胞の細胞質で増幅します。(通常は核内)
有名な病気としては天然痘です。
発熱や皮膚症状(紅斑、水疱、膿疱、瘢痕、丘疹)が見られます。
ヘルペスウイルス科
ヘルペスウイルスにはいくつか種類があります。
- アルファヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス)
- ベータヘルペスウイルス
- ガンマヘルペスウイルス
アルファヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス)
単純ヘルペスウイルスの特徴は、回帰感染を起こすことです。(回帰感染:ウイルスは神経節に潜伏。後に再活性化されて症状が再び出てくる)
代表的な病気としては口唇ヘルペスがあります。
他にも
- 性器ヘルペス
- 角膜ヘルペス
などもあります。
水痘(みずぼうそう)、帯状疱疹も単純ヘルペスウイルスで引き起こされます。
ベータヘルペスウイルス
サイトメガロウイルスが有名です。
免疫抑制患者によく感染症が発症します。
ガンマヘルペスウイルス
ガンマヘルペスウイルスといえば、EB virusです。がんと感染症
EB virusはバーキットリンパ腫の原因で鳴ることが有名です。
アデノウイルス科
アデノウイルスは大量のウイルスを産生できるため、遺伝子治療などに用いられています。
感染症としては咽頭結膜炎があります、
パピローマウイルス科
パピローマウイルスは子宮頸がんなどの癌の原因になるウイルスです。(がんと感染症 )
尖圭コンジローマなども起こします。
ポリオーマウイルス科
ポリオーマウイルスとしては以下のものがあります。
- 出血性膀胱炎を起こすBKウイルス
- 進行性多巣性白質脳症(PML)を引き起こすJCウイルス
パルボウイルス科
パルボウイルスは最初に述べたとおり、一本鎖のDNAウイルスです。
ヒトパパルボウイルスは、伝染性紅斑(りんご病)を引き起こします。
以上DNA virusでした!
1本鎖・プラス鎖RNAウイルス・ポリオ・手足口病・デング熱・風疹・ノロウイルス
ウイルス学の各論では、ウイルスの名前をじゃんじゃん覚えていきます。
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ここで
- DNAウイルスかRNAウイルスか
- 1本鎖DNA(RNA)ウイルスか2本鎖DNA(RNA)ウイルスか
- (1本鎖RNAウイルスなら)プラス鎖かマイナス鎖か
による分類を書きました。
(今後も使うのでぜひ復習なさってください。)
今回はプラス鎖RNAウイルスを学習します。
1本鎖・プラス鎖RNAウイルス
以前学習しましたが、1本鎖・プラス鎖RNAウイルスは、およそ以下のものがあります。
- ピコルナウイルス科
- カリシウイルス科
- アストロウイルス科
- トガウイルス科
- フラビウイルス科
- ヘペウイルス科
- コロナウイルス科
ではそれぞれについて見ていきましょう。
ピコルナウイルス科
「pico+RNA virus」
これを略してピコルナウイルスです。
picoは「小さな」という意味になります。
エンベロープのない構造です。
ピコルナウイルス科の中にもまだ分類があって、
- エンテロウイルス属
- ヘパトウイルス属
- パレコウイルス属
- コブウイルス属
とあります。
有名なものは、エンテロウイルス属の「ポリオ」です。
小児麻痺を引き起こします。
125ヵ国でいまだに流行しています。
「生ワクチン」or「不活化ワクチン」での対策がなされてはいます。
他にもエンテロウイルス感染症として手足口病があります。
原因ウイルスはたくさんあります。
コクサッキ―A16型 コクサッキーA6型 エンテロウイルス71型などです。
カリシウイルス科
カリシウイルス科で有名なのは、ノロウイルスです。
ウイルス性胃腸炎・ウイルス性食中毒を引き起こします。
「カキ」(貝)を食べることで引き起こされることが多いです。
アストロウイルス科
アストロウイルスは、astroというように、星状の構造です。
乳幼児の急性胃腸炎を引き起こします。(重症化は稀です)
トガウイルス科
トガウイルスには
- ルビウイルス(風疹ウイルスが有名)
- アルファウイルス(動物から蚊を介して人に)
とあります。
ルビウイルスー風疹ウイルス
風疹ウイルスによって、風疹が発症します。
妊婦さんが風疹になると、胎児には
- 先天性心疾患
- 白内障
- 感音性難聴
の3主徴が見られるため、風疹のワクチン接種が大切です。
アルファウイルス
アルファウイルスは蚊を介してヒトに伝わります。
ベネズエラ馬脳炎ウイルスなど、脳炎を引き起こすウイルスがいます。
脳炎を起こすものは、致死率が30-70%で予後が不良です。
フラビウイルス科
フラビウイルスには
- 黄熱ウイルス(黄疸)
- デングウイルス
- 日本脳炎ウイルス
- ジカウイルス(ジカ熱)
と有名なウイルスがたくさんいます。
デングウイルス
デングウイルスによって、デング熱が引き起こされます。「デング熱」になると、体中から出血するわけではありません。
デング熱に何度かかかると、重症化し、「デング出血熱」となり体中から出血傾向が見られます。
コロナウイルス科
コロナウイルスは「crown-like」ウイルスです。顕微鏡では王冠のように見えます。
SARSやMERSなど、新興感染症などあります。
細菌学各論~小さい細菌(マイコプラズマ・リケッチア・クラミジア)
今回は、マイコプラズマ・リケッチア・クラミジアについて学習します
小さい細菌
マイコプラズマ・リケッチア・クラミジアの特徴は「細菌の中でも特に小さい」ということです。
普通の細菌は大きさが0.5-10μmですが
- マイコプラズマ:0.1-0.5μm
- リケッチア:0.2-2.0μm
- クラミジア:0.2-0.3μm
このようにとても小さいのです。
小さいというのがこれらの細菌の特徴になります。
マイコプラズマ
小さい細菌の中でも、最も小さく、「最小の自由生活・自己複製性微生物」と言われています。
ヒトから分離されるマイコプラズマ種はたくさんあります。
「マイコプラズマ肺炎(強い乾性咳が有名)」などがあります。
マイコプラズマ肺炎では、細菌が、過酸化水素を産生し、直接的な組織障害がおこります。
リケッチア
リケッチアも小さな細菌です。
節足動物がベクター(媒介動物)となります。
リケッチアの特徴は、「偏性細胞内寄生体」です。
「偏性細胞内寄生体」は
- 細胞外で増殖できず、単独で培養できない
- 宿主の細胞内で増殖する
という「ウイルスみたいな」細菌です。
偏性細胞内寄生体としては、
- 全てのウイルス
- 一部の真正細菌(リケッチア・クラミジア)
- 一部の原虫(トキソプラズマ・リューシェマニア)
これらが「偏性細胞内寄生体」です。
リケッチアが引き起こす病気としては
- 発疹チフス(シラミがヒトからヒトに広める)
- 日本紅斑熱(マダニが感染を広めている)
- つつがむし病(ツツガムシによって広まる。昔はアカツツガムシだったが、最近はタデツツガムシ・フトゲツツガムシがひろめている。)
つつがむし病は
- 頭痛
- 全身の発疹
- リンパ節の腫脹
- 刺し口
の四大症状が有名です。
クラミジア
クラミジアもリケッチア同様に
偏性細胞内寄生をします。
リケッチアとクラミジアは偏性細胞内寄生で同じですが、クラミジアでは「ヒト―ヒト感染に節足動物を必要としない」という点で違います。(リケッチアはシラミ・マダニ・ツツガムシなどを必要とする)
クラミジアとしては以下の者が有名です。
- トラコーマクラミジア
- オウム病クラミジア
- 肺炎クラミジア
があります。
トラコーマクラミジア
トラコーマクラミジアは、性器クラミジア感染症や眼科系感染症を引き起こします。
性感染症クラミジアは、男性では自覚症状があるため早期発見早期治療ができるのですが、女性はなかなか自覚症状が出ないため、
ピンポン感染が起きてしまうことがあります。
オウム病クラミジア
オウム病を引き起こします。
鳥類の排泄が原因となりヒトに感染します。
オウムの排泄のみならず、インコやハトなどの排せつ物からも感染するため、
意外と身近にあります。
過程で勝っている鳥が原因になるため、家族内での集団発生が見られます。
肺炎クラミジア
クラミジア肺炎は、ヒトを本来の宿主とする
クラミジアです。
成人の多くに、この病気に対する抗体があります。
小児や高齢者での発症が多いです。
グラム陰性菌
グラム陰性菌
グラム陰性菌については、主に、
- グラム陰性通性嫌気性桿菌
- グラム陰性好気性桿菌
- グラム陰性好気性球菌
- らせん菌
に分けられるようです。
今回は特にグラム陰性好気性球菌(グラム陰性球菌はほぼ好気性)を扱います。
グラム陰性通性嫌気性桿菌
グラム陰性通性嫌気性桿菌は以下に分けられます。
・腸内細菌科
- エシェリキア属
- シゲラ属
- サルモネラ属
- エルシニア属
- クレブシレア属
・ビブリオ科
- ビブリオ属
・その他
- ヘモフィリス属
ではそれぞれについて見ていきましょう。
腸内細菌科
腸内に生息する細菌が多いです。
腸内に存在するだけでは病気にはなりませんが、何らかのメカニズムで細胞に侵入して悪さをします。
エシェリキア属ー大腸菌
エシェリキア属といえば大腸菌です。「O157」なんて有名かと思います。
大腸菌にはたくさんの種類があります。
- O抗原を持つもの(171種類)
- H抗原を持つもの(56種類)
- K抗原を持つもの(80種類)
O157とは、O抗原の番号157ということです。
通常の大腸菌そのものは腸管内常在菌ですが、腸管病原性大腸菌というものも存在します。(イイモンの大腸菌とワルモノの大腸菌があって、病気を起こすのはワルモノ)
病気を引き起こす腸管病原性大腸菌は以下のものです。
- 腸管病原性大腸菌(狭義)(小児の急性胃腸炎の原因)
- 腸管組織侵入性大腸菌(途上国に多く赤痢に似た症状)
- 毒素原性大腸菌(コレラ毒素に似た症状・途上国の下痢症)
- 腸管出血性大腸菌(O157が有名。日本など先進国でも繰り返し大規模な流行を起こしている)
- 腸管凝集付着性大腸菌
シゲラ属ー赤痢菌
シゲラ属と言えば、赤痢菌です。赤痢菌の発見には日本人の志賀潔が有名ですね。
細菌性の赤痢を引き起こします。(アメーバ赤痢は原虫による感染症)
衛生環境の悪い途上国に多いです。
サルモネラ属ーチフス
サルモネラ属による菌は以下のものがあります。
- チフス菌
- パラチフス菌
- ゲルトネル菌
- ネズミチフス菌
これらにより以下の感染症が引き起こされます。
腸チフス・パラチフス(途上国に流行。バラ疹・脾腫・除脈の三大徴候)
サルモネラ症(加熱されていない肉や卵による食中毒)
エルシニア属ーペスト
ペストの自然宿主はげっ歯類です。
ネズミを吸血したノミから人間に感染します。
黒死病と言われ14世紀のヨーロッパに壊滅的被害を与えました。
ペストにも
- 腺ペスト
- 肺血症ペスト
- 肺ペスト(死亡率が高い)
とあります。
その他の腸内細菌
- クラブシエラ属菌
- エンテロバクター属
- セラチア属
などがあります。
ビブリオ科ービブリオ属
ビブリオ属としてはコレラ菌が有名です。
コレラは今も世界的に大流行をしています。
コレラは下痢が出まくるので、トイレにいけないくらいひどく出るので、
寝ながら便を垂れ流しできる「コレラベッド」などもあります。
その他の科ーヘモフィルス属ーインフルエンザ菌
インフルエンザは、インフルエンザウイルスで引き起こされますが、昔は、「インフルエンザ菌」が引き起こすとされていたため、このような名前になりました。
気道の常在菌ですが、高齢者に病気を引き起こします。
以上「グラム陰性通性嫌気性桿菌」でした。
グラム陰性好気性桿菌
グラム陰性好気性桿菌は以下のものがあります。
- シュードモナス属
- ボルデテラ属
- ブルセラ属
- フランシセラ属
- レジオネラ属
- コクシエラ属
ではそれぞれについて見ていきましょう。
シュードモナス属ー緑膿菌
緑膿菌が有名です。
鞭毛をもちます。
包帯を緑色に染める膿を産生します。
通常は病気を起こしません(日和見感染で有名)
院内感染を起こし、多剤耐性菌になってしまう菌としても有名です。(多剤耐性緑膿菌)
ボルデテラ属ー百日咳菌
百日咳菌が有名です。
百日咳毒素が病気を引き起こします。
百日咳は1歳未満の子供で好発します。(死亡例もあります)
日本でも2007年には香川大学で流行したこともあります。
ブルセラ属
ブルセラ属の近は人獣共通感染症を引き起こします。(ヒツジ・ヤギ・ウシ・ブタ)
獣医師や、酪農に従事する人に多いです。
軽症の場合が多いですが、慢性化することもあります。
フランシセラ属ー野兎病菌
野兎病菌が有名です。
ウサギやげっ歯類が自然宿主です。(人獣共通感染症)
日本では野生のウサギが減ったことで、流行はなくなってきました。
過去には、野生のウサギやヤギををとって食べていた地域(東北地方など)で流行していました。
レジオネラ属
「レジオネラニューモフィリア」でレジオネラ感染症が引き起こされます。
至適温度が20-50度で増えます。(温泉やプールで見られます。)
ポンティアック病やレジオネラ肺炎を引き起こします。
1976年のフィラデルフィアで大流行しました。
コクシエラ属
Q熱・Q feverという病気を引き起こします。
節足動物・鳥類・げっ歯類・家畜やペットに感染しますが、ほとんどが無徴候です。
動物の胎盤で増殖し、流産・死産を引き起こしてしまいます。
以上、グラム陰性好気性桿菌でした!
グラム陰性好気性球菌
グラム陰性好気性球菌は以下の分類を受けます。
- ナイセリア属菌
- モラキセラ属菌
- アシネトバクター属
以上が有名です。それぞれについて見ていきましょう。
ナイセリア属菌
ナイセリア属菌には
- 淋病を引き起こす淋菌
- 髄膜炎を起こす髄膜炎菌
があります。
淋菌
ソラマメ状、腎臓の形をした菌です。
淋病を引き起こします。
淋病は、以下のような炎症を引き起こします。
- 男性は尿道炎が多い。尿道から上向性に感染が拡大し、精巣炎・精巣上体炎・前立腺炎。
- 女性は子宮頸管炎が多い。上向性に感染が拡大すると、子宮内膜炎。
- 男女ともに、オーラルセックスによる咽頭炎も見られる。
淋病は性行為感染症ですが、最も患者数の多い性感染症です。
日本でも増加傾向にあります。男性の方が自覚症状が分かりやすいです。
髄膜炎菌
線毛があります。
侵襲性髄膜炎菌感染症を引き起こします。
病態としては、
- 菌血症
- 髄膜炎を伴わない敗血症
- 髄膜船
- 髄膜脳炎
4病態があります。
アフリカのサハラ以南で流行しています。
モラキセラ属菌
モラキセラ・カタラリスが代表的な菌です。
線毛があります。
鼻腔気道の常在菌です。
アシネトバクター属
自然環境中や、ヒトの皮膚から検知されます。
人工呼吸器を装着している患者さんの肺炎を引き起こします。(「医療関連感染」)
医療関連感染とは、「医療機関において患者が、原疾患とは別に罹患した感染」です。アシネトバクターは多剤耐性菌にもなるので注意が必要です。
らせん菌の分類
らせん菌は以下の分類がなされます。
まず、スピロヘータ門とプロテオバクテリア門の二つに分類されます。
スピロヘータ門は今はほとんどいません。
そして、それぞれの門について、
・スピロヘータ門
- トリポネーマ属
- ボレリア属
- レプトスピラ属
- スピロヘータ属
・プロテオバクテリア門
- カンピロバクター属
- ヘリコバクター属
- ズピリルム属
の属に分けられます。では、それぞれについて、見ていきましょう。
スピロヘータ
細長くコルクスクリュー状です。
鞭毛があり、運動性もあります。
トリポネーマ属~梅毒トリポネーマ
トリポネーマ属は培養が難しいです。
機械的刺激に弱いからです。
そのため、直接感染による感染がメインです。
梅毒トリポネーマは梅毒の原因菌です。
直接感染がメインで、
- 性行為(性感染症)
- 経胎盤感染
で感染が広がります。
日本では、梅毒の人数が年々増えています。
時間とともにどんどん病態はひどくなります。
ボレリア属
げっ歯類が保菌宿主となります。
シラミやダニが、げっ歯類からヒトへと
菌を移します。
ライム病ボレリア
しか・ねずみが保菌宿主で
マダニから感染します。
日本でも、北海道・長野でよく見られます。
「ライム病」を引き起こします。
回帰熱ボレリア
野生のダニやシラミで媒介されます。
熱帯な不衛生な環境で多く見られます。
回帰熱を引き起こします。
5-7日おきに高熱(40度)と平熱を繰り返すため、
回帰熱と言われています。
レプトスピラ属
げっ歯類、家畜(ウシ・ウマ・ブタ)、イヌネコが保菌動物になります。
熱帯の発展途上国でよく見られます。
軽症ではありますが、日本でも秋に流行しています。(20人程度)
劇症型はワイル病とよばれ、致死性(5-30%)です。
プロテオバクテリア
カンピロバクター属
らせん状ですが、カモメの翼のような見た目です。
ほ乳類と鳥類の腸管に生息します。(人獣共通感染症)
噴口感染や経口感染で広まります。
「カンピロバクタージェニ」という細菌が、カンピロバクター腸炎を引き起こします。
「夏場に多い細菌性食中毒」の原因です。(食中毒については:微生物の定義/細菌とウイルスの違い/腐るとは?季節性食中毒? - 医学部生の基礎医学)
ヘリコバクター属
「ヘリコバクターピロリ」「ピロリ菌」はめちゃくちゃ有名な菌ではないでしょうか。
- MALTリンパ腫
- 胃癌
- 胃潰瘍
- 萎縮性胃炎
- 慢性胃炎
など、いろいろな胃の病気を引き起こします。
グラム陽性菌
グラム陽性桿菌
グラム陽性桿菌は、以下に分けられます。
- バシラス属
- クロストリジウム属
- コリネバクテリウム属
- リステリア属
バシラス属とクロストリジウム属は「芽胞菌」と言われています。
種々の物理化学的刺激に抵抗性を持つ、「芽胞」という状態になるときがあります。
「芽胞」であるときは、休眠状態なので、増えませんが、かわりに死にません。
「発芽→栄養型細胞(増殖する)→芽胞形成→休眠→発芽→・・・」とサイクルを繰り返します。
こうすることで、無駄死にすることなく増えていきます。
バシラス属
大型のグラム陽性桿菌です。
- 炭疽菌
- セレウス菌
があります。
炭疽菌
鞭毛がなく運動性もないです。
- 乾熱で140度3時間
- 温熱で121度5-10分
これくらい加熱しないと死にません。乾燥状態でも数年以上生存します。(芽胞の強み)
もともとは野生草食動物ヒツジやヤギの病気でした。(牧草などに芽胞がいた。)
イラク・イラン・トルコ・パキスタン等に多いです。
- 経皮感染(皮膚炭疽)
- 吸入感染(肺炭疽)
- 経口感染(腸炭疽)
これの経路で感染して、血行性・リンパ行性で全身に広がり、敗血症を引き起こします。
細菌によるテロなどでも、炭疽菌は用いられています。(オウム真理教なども試みたと言われています。)
セレウス菌
炭疽菌と異なり、鞭毛をもち、運動性もあります。
中毒を引き起こします。
- 嘔吐型のセレウリド(熱で不活化されない。1-6時間で発症)
- 下痢型のエンテロトキシン(熱で不活化される。8-16時間で発症)
これら2つで中毒が引き起こされます。
食中毒への対策としては、「細菌の増殖の時間をなくす」つまり、「作ったらすぐ食べる」ことで、菌の増殖を防ぐのです。
クロストリジウム属
ほとんど編成嫌気性菌です。
土壌に生息しており、怪我をしたときなどに、傷口から、土壌に交じって体内に入ってきます。
菌としては、
- 破傷風菌
- ボツリヌス菌
- ウェルシュ菌
- ディフィシル菌
があります。
破傷風菌
破傷風毒素が病気(破傷風)を引き起こします。(潜伏期間が3-21日)
全身性破傷風を引き起こします。
痙性麻痺を引き起こします。(わずかなもの音や光などの刺激で、痙攣を引き起こします。)
ボツリヌス菌
ボツリヌス毒素が病気のもとになります。
弛緩性麻痺(痙性まひと反対)
呼吸筋がマヒすることで致死性です。
潜伏期間が2-40時間で、下痢や嘔吐も引き起こします。
ウェルシュ菌
20-50度で増殖します。(加熱不十分な食材で増殖します。)
- ガス壊疽(毒素により)
- 食中毒(エンテロトキシン産生菌)
などの病状が見られます。
ディフィシル菌
ディフィシル菌は多くの抗菌薬に耐性があり、
ヒト・動物の腸管に生息しています。
腸内細菌のバランスが破たん(菌交代減少)により、偽膜性大腸炎を引き起こします。
コリネバクテリウム属
非運動性で、芽胞形成はありません。(芽胞菌はバシラス属とクロストリジウム属です。)
ジフテリア菌が有名です。ジフテリア(病名)を引き起こします。
飛沫感染で広がり、上気道粘膜で増殖し。気道を閉塞させ、、また、血漿に毒素が流れることで。
心筋障害・ジフテリア後マヒを引き起こします。
コリネバクテリウムは「放射菌」の一つです。
リステリア属
リステリア菌があります。
人畜共通感染症のリステリア症を引き起こします。
敗血症・髄膜炎が有名です。
グラム陽性球菌
グラム陽性菌には球菌・桿菌があります。ここからは、グラム陽性球菌を扱います。
グラム陽性球菌には以下3つに分かれます。
- ブドウ球菌属(genus Staphylococcus)
- レンサ球菌属(Streptococcus)
- 腸球菌属(Enterococcus)
ブドウ球菌もレンサ球菌も菌の名前として、人生で一回は聞いたことがあるかもしれません。
ではそれぞれについて学習していきましょう。
ブドウ球菌属
ブドウ球菌属は
- 非運動性
- 通性嫌気性
という特徴があり、20種類以上あります。
代表的なものとしては、いかのものがあります。
- 黄色ブドウ球菌(腸管毒素:スーパー抗原・食中毒)
- 表皮ブドウ球菌(皮膚常在菌)
- 腐性ブドウ球菌(尿道周囲の細菌叢・女性の尿路感染症)
レンサ球菌
- 通性嫌気性菌
- 非運動性
赤血球を溶血する溶毒素を持ちます。
- α溶血性:不完全溶血・緑色不明瞭
- β溶血性:完全溶血・緑色明瞭
- γ溶血性:非溶血
レンサ球菌にもいろいろな種類があります。
- 化膿レンサ球菌(A型レンサ球菌)(急性糸球体腎炎など)
- B型β溶血性連鎖球菌(直腸常在菌)
- 肺炎レンサ球菌(α溶血)(急性細菌性肺炎)
腸球菌
腸球菌は、名前の通り、腸管に存在します。
腸管は強い酸性条件になったりしますが、腸管で暮らしています。つまり、「非常に厳しい環境」でも生存できる菌なのです。
日和見感染症を引き起こします。
院内感染(病院内で感染が広がること)も引き起こすことで有名です。
院内で感染が広がるのは、「バンコマイシン耐性腸球菌」つまり、バンコマイシン(グリコペプチド系の抗菌薬)がきかないものです。
薬(バンコマイシン)が効かないため、体が弱っている人にどんどん感染していってしまいます。(院内感染)
医動物学各論~原虫・マラリアの微生物学と経済的影響
今回は、「マラリア」に焦点を絞って、記事を書きます。
マラリアの分類と基本情報(微生物学)
マラリアはプラスモジウムという原虫で引き起こされます。
根足虫類 | 赤痢アメーバ |
アカントアメーバ | |
鞭毛虫類 | ランブル鞭毛虫 |
トリコモナス | |
トリパノソーマ | |
リューシュマニア | |
胞子虫類 | プラスモジウム |
トキソプラズマ | |
クリプトポジウム | |
サイクロスポラ | |
イソスポラ | |
繊毛虫類 | パランチジウム |
マラリアはmal+aria (air) と書きます。
悪い空気という意味です。(健康とは?正常とは?normalとmal WHO!?malには特別な意味があります)
微生物学のマラリア
マラリアは「ハマダラガ」という蚊に媒介されて感染します。
プロスモジウム(マラリア原虫)で感染しますが、マラリア原虫にもたくさんの種類があります。
- 熱帯熱マラリア原虫
- 三日熱マラリア原虫
- 四日熱マラリア原虫
- 卵形マラリア原虫
以上のようにたくさんの種類があるのです。
熱帯熱マラリアが、よく言われる「マラリア」です。他の三つはあまり重症化はしません。
- 悪寒・発熱
- 筋肉痛
- 悪心・嘔吐・下痢
以上の症状を引き起こします。他にも低血圧や黄疸などを引き起こします。
マラリアはなぜ有名か?~経済的意味
マラリアはなぜ有名なのでしょう?
今まで学習してきた病気よりも、
「マラリア」は有名な名前だと思います。
その有名な理由は、「影響力が大きいから」です。
マラリアは、「マラリア流行国での国民生産量を50%も減らしている」と言われています。
理由としては、マラリアにより、
- 子供の認知発達障害
- 学校教育の中断(マラリアの流行で学校が休みなど。日本でもインフルエンザが流行れば休みになりますよね。)
- 貯蓄の減少(治療などにお金がかかる)
- 投資の減少(マラリアが流行する国は、投資先としては遠慮される。マラリアのない国に投資したほうが、投資のリスクが低いため。)
以上の問題が引き起こされているのです。これにより、経済発展の遅れている国々があるのです。
マラリアへの対策
マラリアへの対策は
- 殺虫剤処理蚊帳
- ベクターコントロール(蚊のコントロール)
といった、「蚊のコントロールによる感染拡大の防止」と
「マラリアの早期発見早期治療」等が行われています。
有名な話として、赤血球の形が異常になる、「鎌状赤血球症」の人はマラリアに対して強いとされています。